青の果てへと泳ぐきみへ
もう帰りたい。
でも立ち上がれない。
こわくて、心細くて、鼻の奥がつんとする。
堪えきれず嗚咽が込み上げてきたその時、
「佐波、俺ここにいる」
わたしがへたり込んでいる岩よりももう少し先端寄りの岩場の陰から、待ち焦がれた声が聞こえた。
「……ななせ?」
「うん、佐波の近くにちゃんといるから」
「ななせ、こっち、来て」
涙で震えて、小さな子どもみたいな声が出る。
七瀬の気配にほっとした。
でもまだ足りない。
そんなに離れた岩陰じゃなくて、顔の見えるところまで来てほしい。
わたしの隣に、来てほしい。
「……や、悪いけどちょっとそれは無理」
「なんで! はやくこっち来てよぉ……っ!!」
無理って、どうして。
姿の見えない彼の言葉にまた心細くなって、わたしは声を張り上げた。ほとんど絶叫だ。
でも声が枯れているせいでそれほど大きくは響かない。
「ななせぇ、ひとり、いやだぁ……っ」
静かな海に溶けていく自分の声が、かえって不安を煽る。
いやだ、こわい。
七瀬がいないと、その手で触れてくれないと、
さみしくてたまらない。