青の果てへと泳ぐきみへ
◇
「ん〜!今日もきもち〜!!」
両手を伸ばし風を全身に受けながら見渡すのは、一面を覆い波打つ、深く澄んだ青。
空は快晴。雲なんてひとかけらもない。
高校の夏季講習が終わってすぐに自転車を飛ばして来た甲斐があった。
絶好の海水浴日和だ。
「……あーあ今日も楽しい水泳の時間がやって来た……」
「やって来たね!!」
「ドがつくほどのカナヅチに泳ぎを一から教えるこの地獄みたいな課外授業な……」
宝石を溶かしたみたいに青く輝く海をぐるりと一望できるこの小さな岬は、この町でいちばん美しく、静かな場所。
今この時間、わたしたち以外には誰もいない。
わたしたちを邪魔するものは何もない。
……これ以上ないほど穴場の練習場所にいるというのに。
わたしの眼下には、海から上半身を岩に預け心底めんどくさそうに浮き輪を膨らませる男が約一名。