青の果てへと泳ぐきみへ
 


細波を反射しているかのように輝く、夢のような、星のような、小さくて眩しい無数の岩肌の光。

あの光とともに、わたしの前に現れた人魚……


「人魚の祈りに呼応して星みたいに光るって言われてて。光らせることができたら願いが叶う……まあこれもおとぎ話みたいなもんだったんだけど。面白そうだから試しに来たんだよ」

岸壁に向いていた七瀬の瞳が、今度はわたしの顔を映す。


「――そしたら、佐波を見つけた」




10年前のあの日。
岬へと泳ぎ着いた少年人魚は、遠くの海辺で貝殻拾いに勤しんでいるひとりの少女をじっと眺めていた。

陸に二本の足で歩く自分たちとよく似た生き物がいることは知っていたけれど、実際に人間を見るのは初めてで、好奇心がくすぐられる。

もっと近くで見れないだろうか。
でもあちらは浅瀬だし、あまり近付きすぎると危険かも……

それならば、


(岬へ誘き寄せればいいんじゃないか?)


岩陰に隠れて歌ってみようか。
でも大勢人間が集まってきたら困る。

何かもので釣ってみようか。
でも役に立ちそうなものは生憎持ち合わせていない。


 
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