青の果てへと泳ぐきみへ
恐る恐る灯台下の岩場を覗いてみると、そこについ先ほどまでいたはずの少女の姿が見当たらない。
もしかしてと思い海へ潜る。
すぐに見つけた。
星を探して自ら飛び込んだのか、はたまた足を滑らせ落ちてしまったのか。
少女が、どんどん海底へと沈んでいく。
その様子を眺めながら、またひとつ興味が芽生えた。
尾びれもエラも水掻きもない人間はどうやって海の中を泳ぐのだろう。
あの二本の足は海の中でも歩けるのだろうか。
人魚はじっと観察する。
けれども少女が泳ぎ始める気配はなく、立派な二本足を動かすこともない。
ただ重力に身を任せて沈んでいく。
何やら様子がおかしい……そしてはたと気付いた。
……尾びれもエラも水掻きもない。
(人間ってもしかして、泳げないんじゃ、)
結論に至るのが先か、体が動くのが先か。
人魚は風のように少女の元まで泳ぎ着き、その小さな体を抱きかかえて水面へ戻って来た。
岩場に横たえ、呼吸があるのを確認して安堵する。
でも意識がない。
思い悩んだ末、岩場よりは見つけられやすいであろう岬近くの海岸へと少女を運んで。
しばらくしてやって来た親らしき女性に抱き上げられ、元来た道を戻って行くところまでを見届けた。