青の果てへと泳ぐきみへ
 


人魚はすぐには帰らずに、少しの間小さな岬の海に留まっていた。

海へ誘き寄せて観察しようだなんて、馬鹿なことをした。
自分のせいで溺れさせてしまった。
あの子は大丈夫だっただろうか。

もう一度会いたい。
どうかまたここへ来て、
元気な姿を見せてくれないだろうか。


ああ、おれに足があったなら、

あの子に会いに行けるのに。



しかし少女が再び岬へ現れることはなく、
この町の海に来て数日経った朝、灯台下の岩場で目を覚ますと。


碧い尾びれが、あの子と同じ二本の足に変わっていた。





「――それで、この町で生活し始めた。俺は佐波に会いに行きたくて、『星降る岩』がその願いを叶えて人になったんだよ」


……本当に、おとぎ話みたいだ。

七瀬の話を一通り聞き終え、わたしはまた夢か現実かわからないような、ふわふわした気持ちになっていた。

始まりは、人魚のちょっとした好奇心。

わたしと同じように、七瀬も願っていた。
わたしがずっと人魚姫に会いたかったように、彼もまた。

そしてわたしたちは出会った。


 
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