青の果てへと泳ぐきみへ
――わたしには。
ずっと会いたいひとがいた。
焦がれてやまないひとがいた。
だからわたしはこの季節になるとここへ来て、
そのひとの帰りを、待っていた。
その”彼”は今、わたしの隣にいる。
二度目に岩壁の星が光ったあの日、七瀬が10年間守り続けた魔法は解けてしまったけれど。
それと引き換えに、わたしの願いが叶ったのだ。
「ほら佐波、」
「なに?」
「浮いてる」
「……え?」
一瞬七瀬の言葉の意味がわからなくて、彼の方に目を向ける。
彼は楽しげに笑いながら、美しい顔の横でぱっと両手を広げて見せた。
あれ、そういえば。
さっきまで七瀬の手はわたしの肩に……
「あっうそ……うぶっ」
いつの前にか七瀬の支えなしに自分ひとりで海に浮かんでいたことに気付き、思わず仰向けになった体を起こそうとして――
間一髪、また沈みそうになったわたしの体を七瀬が抱きとめてくれた。