青の果てへと泳ぐきみへ
 



ドボン、と激しい水音。

その瞬間、わたしの視界は青に包まれた。


手足が重くて動かせない。
たくさんの小さな泡が体を通り過ぎ、上へ上へと昇っていく。
その先にぼんやりと見える、買ってもらったばかりの帽子の影。

影はだんだんと遠ざかり、小さくなっていく。
青が、深くなっていく。
体が、冷たくなっていく。


沈んでいく。


手を伸ばしても、もう届かない。



届かない。



とどかな……







(……え?)



息がもたず、ついに意識を手放しかけた時。
力なく伸ばしていた手を、誰かの手が、ぎゅっと掴んで引き上げた。

そしてその手がわたしの体を抱き寄せた瞬間、


――視界の淵で、碧い尾びれのようなものが、ゆらりと揺れたのだ。



 
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