青の果てへと泳ぐきみへ
そして今年はその、10年目の夏だ。
「……人魚の寿命ってどれくらいなんだろう。さすがにまだ生きてるよね?」
「さあなー」
「ねえ、何かお供えしたら来てくれるかな? 人魚姫の好物って何だと思う?」
「んー? ワカメ」
「……それは七瀬の好物でしょうに」
「キュウリでも投げてみりゃいんじゃね」
「それは河童!!」
……このやる気があるのかないのかよくわからないワカメ野郎とは、わたしが人魚姫に出会った年に、二学期から転入した小学校で彼がさらに遅れて転入してくる形で同じクラスになった。
地元ならもしかしたら何か知っている子がいるかもしれない。
そう思って人魚姫について手当たり次第に聞き回っていたわたしは、転入早々クラスメイトたちだけでなく先生たちからも好奇の目を向けられるようになってしまった。
そんな中、
「おれも見たことあるよ」
たったひとり、そう声をかけてくれたのが、七瀬だ。