青の果てへと泳ぐきみへ
 


「……ねえ七瀬」

「んー」

「人魚姫、いるよね。また会えるよね」


わたしが少し弱音を吐けば、


「……佐波がそう信じるなら、ちゃんと付き合ってやるから。心配すんな」


必ずそう言って頭をぐしゃぐしゃ撫でてくれるから。
彼さえいれば何年だって、何十年だって、わたしはきっと待っていられる。


……それとも七瀬の言う通り、
もう一度ここから飛び込めば、彼女はまた助けに来てくれるのだろうか。


あの日と、同じように。



「……そういえば七瀬ってさ、なんでここから落ちたんだっけ」

「え、」

「わたしはここで貝探ししてたら風に煽られて落ちちゃったってことは何回か話したと思うんだけど。七瀬ってなんだかんだはぐらかしてちゃんと教えてくれてないよね? なんで?」

「……そんなのもう覚えてませーん」


七瀬はつれなく欠伸をすると、通学リュックを枕にしてごろりとその場に寝転んだ。

……このことに限らず、七瀬は普段から自分のことをあまり話したがらない。


 
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