青の果てへと泳ぐきみへ
あの夏に預けられて来て以来、遠い親戚のおばあちゃんと一緒に暮らしているらしいけれど。
どうしてこの町に預けられることになったのか、ご両親はどうしたのか、身の上話を彼の口から直接聞いたことはない。
小さな町だから、もちろんいたるところに噂と憶測は飛び交っている。
だけど七瀬本人が話さない限りどれも本当のことにはなり得ないのだから、わたしはなんだっていいと思っていた。
彼はただ、わたしの友達で、幼馴染みで、腐れ縁で、仲間だ。
生い立ちなんて関係ない。
七瀬は、七瀬だ。
……でも、なんとなくだけれど、ずっと一緒にいると、海を眺める彼の物憂げな眼差しを見ていると、感じ取ってしまうものがある。
どうしても考えてしまうのだ。
彼が、この町にいる理由。
彼が、この岬から落ちた理由。
話したがらない、理由。
学校のプールに足をつけることすらできないほど、深い水を嫌う、理由。
……ねえ七瀬。
わたし本当は、七瀬に無理をさせてしまっているんじゃないだろうか。