空を見上げて雲は宙を舞う。

「…だって、日菜子。……聞いてた?」

姫戸さんが居なくなったあと私は廊下の端に逃げた日菜子に声かける。
だが肝心の日菜子は黙って俯いたまま。

『私さぁ、コソコソ言う奴とか裏がありそうな奴とかめっちゃ苦手でさ。
仲良くしたいと思わない。』

かつてある日の帰り道にそう言っていたことを思い出す。
ここからは私の推測だけれど、日菜子は姫戸さんの事が苦手なんだと思う。
それもそのはず。

4月から少しの間過ごして来て姫戸さんはとにかく……媚びを売っているようにしか見えない。
話したのは今日が初めてであり、ほぼ初対面なクラスメイトに彼女もこんな事は言われたくないかもしれないが、はっきり言って苦手だ。
死語を使うけれど当てはまる言葉で言えば……キャピキャピ、というところかな。
隙あれば自慢ばかりしていて好きじゃない。苦手。

「……姫戸さんめっちゃ裏有りそう話したくない」

やっと口を開いた日菜子はボソボソと苦虫を噛み潰したような顔を浮かべて呟いた。
何時もの彼女はニコニコで人懐っこい性格だからこんな顔をするのは珍しい。

……まぁ、人には好き嫌いがそれぞれ有るみたいだし、仕方が無いことだろう。


「愚痴は後で聞くからチャイムなる前に教室入ろ?ね?」

黙って私の顔を見て頷く日菜子と共に教室へと足を運んだ。

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