漣響は強くない ~俺様幼馴染みと忘れられた約束~
「関さん。響は怪我人ですよ。しかも、腕の怪我なんですから、落ち着いてください」
「あぁ……そうだったな!申し訳ない。これからの殺陣も楽しみにしているよ。早くネットに公開しないとなー。あ、けど、しばらくの間はどんな動きをするのかの確認だけで、激しい動きは厳禁だからね」
「わかりました」
響は改めて関にお詫びと配慮への感謝を伝えると、「あまり気にしない事だよ」と、笑顔で応えてくれた。
その日はさっそく殺陣の話をしたり、怪我をしてしまった時のモーションを確認しキャラクターの動画になっていくのを見ていたりと、あっという間に1日が過ぎた。
千絃は仕事があるようで、家まで送ると何度も言ったけれど、響は「買い物をして帰りたいから」と言って、断った。
すると、小さな声で「また、誘う」と言われてしまい、その意味を理解した瞬間に頬が真っ赤になってしまい、焦って彼から離れてたのは2人だけの秘密だ。
響が買い物を済ませて家に着いた頃、千絃からメッセージが届いていた。『怪我は大丈夫だったか?明日の朝は迎えにいく』といつもと変わらない文章だった。それだけでも、響は笑顔になる。
『大丈夫よ。千絃は大丈夫?明日もよろしくお願いします』
『俺も大丈夫だ。明日の夜は空いてるか?』
『よかったー!空いてるよ』
『じゃあ、夕食食べに行こう。楽しみにしてる』
恋人同士なら些細なやり取りかもしれない。けれど、今までだったからありえない「楽しみにしてる」の文字を見て、響は思わずニヤついてしまった。
すぐに、『私も楽しみだよ』と、返信をしたまま響はスマホを抱きしめた。
これからはじまる彼との恋人としての生活。
響は甘い時間を想像しては顔を真っ赤にしてしまう。
けれど、好きな人との両思いがこんなにも幸せだったのかと、改めて実感し幸せを感じていたのだった。