漣響は強くない ~俺様幼馴染みと忘れられた約束~
23話「薔薇のボディソープ」
23話「薔薇のボディソープ」
自分の見てきた千絃という男性は、昔と変わっていないようで、とても変わったのかもしれない。
響を求める彼の表情や視線は、まさしく男そのものだった。けれど、それもまたかっこいいと思ってしまうのだから、惚れた弱味という事だろう。
普段は強引で、口調も強い。
けれど、昨夜の千絃は響に対してとても優しく扱ってくれた。強く求め、彼が夢中になる事もあったけれど、それでも「体、大丈夫か?」や「無理させて悪いな」と、頭を撫でながら響を労ってくれる姿さえ見られたのだ。
そんな彼を見ていると、我慢しないと言いつつも、きっと我慢しているのではないか。そう思って、「我慢しないで……」と伝えると、千絃は動揺した様子を見せ、「おまえは俺にどうなって欲しいんだ……」と苦笑いをした後に、小さくキスを落とし「それはいつになるか………。今日はだめだ」と、言って大切に大切に抱いてくれたのだ。
響はそんな夜の時情を思い出しながら、隣りで眠る彼を見つめる。あどけない表情で無防備に眠る千絃は、昔と変わらない。うっすらと記憶に残る幼い頃に共にお昼寝をした時も、彼はとても近くで寝てくれていたなと思った。
彼の寝顔は少し前にも見たけれど、今朝は違った意味を持つ。彼との距離は今までのどんな時よりも近くなったのだから。
響はまだ彼の腕の中で眠っていたかったけれど、寝室の時計を見るとそろそろ起きなければいけない時間が近づいていた。
早めに起きて朝食を作ろうとも思ったけれど、ベットから出た途端に彼が起きてしまいそうだと思ったのだ。
彼の寝顔を見るのはそろそろおしまいだと、響は意を決して千絃を起こすことにした。