漣響は強くない ~俺様幼馴染みと忘れられた約束~
「おはようございます、和歌さん」
「あぁ。漣さん、おはよう。今日は特別早いね」
「きっと、和歌さんが今から寝る時間だと思ったので来てみました」
「君は僕の事をよく知っていてくれるね。その通り、締め切りや舞台関係の事で仕事が山積みでね」
「…………和歌さん、昨日の話ですが………」
響が中庭に降り、和歌に近づく。
すると、庭に向けていた体をこちらに向けて、いつものように笑いかけてくれる。けれど、響はその笑みがいつもと違うように感じてしまった。
「昨日は突然すみませんでした。それに、ネットニュースも拝見しました。私のところにも連絡が沢山来てまして。もう面倒なので、スマホやパソコンから逃げて、庭まで来てしまいました。けれど、漣さんには悪い事をしてしまいました。お話をしたばかりだったのに」
「和歌さん、その話なんですが」
「けれど、調度よかった」
「え………」
響の言葉を遮るように話し始めたのだ。響の次の言葉をまるでわかっており、言わせないためなのだと。だが、和歌の「調度いい」の言葉の次に来るものが全くわからずに「どういう事ですか?」問い返してしまう。けれど、その瞬間に彼が口元をニヤリとさせたのを見て、響は「しまった」と思った。が、それは後の祭りだ。