漣響は強くない ~俺様幼馴染みと忘れられた約束~
★★★
響が正式に演劇の仕事を引き受けた事で、ニュースでもその話題が取り上げられることが多くなってきた。だが、響はもう一般人だからか、それとも和歌の家という事があってか、記者が訪れることはほとんどなかった。もちろん、ゲーム会社もだ。響に独占取材を申し込んだりインタビューする記者も表れるかと思ったが、それもなく千弦は驚きを隠せなかった。
だが、それもそのはずで、漣響と宮田春でのインタビューが実施される事になったのだ。これは、すでに会社には連絡が来ていたことで、朝イチで聞かされた響は「わかりました」と、あっさりと引き受けたのだった。
そして、その日の夕刻。
千弦はある場所に一人で立っていた。
もう少しで約束の時間になるからだ。
そこに、サッサッと今時珍しい草履の足音が聞こえてくる。
「おや、あなたは………漣さんの恋人さんですね。こんな所で待ち伏せですか?」
ゆったりとした口調でそう話すのは、もちろん和歌だ。今日も和服で千弦たちの会社を訪れていた。
千弦はそんな和歌を一瞥した後、寄り掛かっていた壁から体を起こした。
「少し話がしたい」
「………話ですか。なんでしょうか?」
「話せばわかる」
「………わかりました」