漣響は強くない ~俺様幼馴染みと忘れられた約束~




 報道も予想より酷くなく、インタビューをする機会をつくると明言したためか落ち着いていた。そのため、響が千弦の部屋に居座る必要もなくなった。それを事前に伝えてはいたが、帰宅する時は彼を探してしまう。
 和歌との話し合いが終わった頃にはいつもの退勤時間よりも大分遅くなっていた。
 スタッフは残業している人はほとんどいなかった。この日はノー残業デーと会社で決めている曜日だったのだ。

 響はきょろきょろと会社内を見て回る。
 けれど、席を外しているのか千絃の姿は見当たらなかった。いつもならば、響が断っても送ってくれる事が多かったので、ついつい待っていてくれているのではないかと思ってしまう。
 けれど、彼のデスクには鞄もなくPCの電源も落とされていた。もう、帰ってしまったのだろう。


 「………千絃。もう帰っちゃったんだ。メッセージぐらい残しておいてくれてもよかったのに」


 スマホにも彼からのメッセージは何も送られて来ていなかった。それを見て、ため息混じりにそう一人呟いた。
 付き合い始めてから、帰るときは話をしたし、送ってもらったり、どちらかの家に泊まる事が多くなっていたので、響はどうしても寂しさを感じてしまった。


 トボトボと会社を出てタクシーに乗り、響は千絃にメッセージを送った。『お疲れ様。打ち合わせは終わったよ。今度、話を聞いてね』と簡単なメッセージ。

 けれど、そのメッセージは深夜になっても返事が来ず、既読にもならない。
 そして、次の日の朝になっても変わらないままだった。



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