漣響は強くない ~俺様幼馴染みと忘れられた約束~
あれからと言うもの、響も千絃と会いづらくなってしまい、2人の距離は遠くなっていった。会話を交わさない日はほとんどだったし、会わない日さえあった。本当に恋人同士なのだろうか。あの時間は夢だったのかと思ってしまいそうになるほどだった。
「響さん、大丈夫ですか?」
「え!?あ、ごめんなさん……ボーッとしちゃって」
「仕事の後だと疲れちゃいますよね」
「大丈夫ですよ、鍛えてますから!えっと……剣の動きの確認ですか?」
「ええ、このシーンなんですけど、何かかっこよく決まらなくて、みんなに「ダサい」って笑われちゃったんですよ」
照れ笑いを浮かべながらそう言う春は、本当に人気俳優なのかと思うぐらいに親しみやすかった。とても気さくな性格で、こうやって響の事を笑わせてくれた。けれど、稽古になると真剣そのもので、こうやって自分の体の動きや剣の持ち方などを細かく確認してくるのだ。
そういう真面目な彼を見ていると、応援したくなってしまい、響はついつい夜中まで稽古に付き合う日々が続いていたのだった。
休日返上で稽古に行くともあり、剣道をしていた頃とは違った、剣の関わり方をしていた。そんな中でも、朝の日課は変わらない。
前の日も遅くまで稽古に行っておりまだ眠たさもあるが、響はいつもと同じ時間に起きて、竹刀を持って中庭に向かった。
少しずつ暑くなってきているが、朝早くはやはり寒い。肌寒さを感じつつも体を動かせば暑くなると思い、半袖のTシャツにズボン。そして、髪を結んだ響は中庭に向かった。
和歌はもう寝たのだろうか。庭には彼の姿はなかった。稽古では時々会うが、ここでは会うことは少なくなっていた。原作者として、彼は彼で忙しい毎日を送っているようだった。