漣響は強くない ~俺様幼馴染みと忘れられた約束~
靴を履き中庭に出ると、和歌の部屋の窓が開いており、窓枠に腕を置き、腕まくらをしながらすやすやと眠る和歌の姿が目に入った。
きっと中庭を見ながら寝てしまったのだろう。
「…………和歌さん……こんな所で寝ちゃうなんて」
仕事をしていたのか、彼はメガネをしたまま熟睡していた。そして、少しメガネがずれてしまい、このままではいつか中庭に落ちてしまいそうだった。
それにこのまま寝てしまっては風邪をひくと思い、響は彼を起こす事にした。
「和歌さん………和歌さーん!」
肩をトントンと優しく叩いて起こそうとするが、和歌は「ん……」と、声をもらすだけでまだまだ眠そうにしていた。
何回か繰り返すが、彼の眠りは深い。全く起きなかった。
響は苦笑し、起こす事は諦めたが眼鏡だけは外しておかないと壊れてしまうのではないかと、気がかりだった。それに寒いのは部屋からブランケットを持ってくればいい。そう思ったのだ。
響は心の中で「起こしてしまったら、ごめんなさい」と思いながら、彼の眼鏡に手を伸ばした。ゆっくりとフレームに触れてゆっくりと彼の耳から眼鏡を外した。彼はまだ寝ているようで目が閉じていたので、響はホッとした。
だが、突然グイッと響は手首を強く引かれたのだ。声を上げそうになるが、それも叶わなかった。何故か。
唇に何かが、触れられていたのだ。
「………っっ………!」
響が気づいた時には、和歌の冷たくなった唇が響の唇に触れられていた。
キスされている。それを理解し、咄嗟に体を離そうとしたけれど、いつの間にか彼の手が後ろに伸びており、後頭部を押さえつけられていた。
響は彼の肩を押すけれど、全く動かない。和歌は体力がないと言いつつもやはり男なのだと思い知らされてしまう。
和歌がうっすらと目を開けて、響を妖艶な瞳で見つめていた。いつもの優しい彼とは違う雰囲気に、響の体はブルッと震えた。
彼が満足するまでの長い間、響は和歌から離れられずにただただ彼を睨み、弱々しく体を押す事しか出来なかった。