漣響は強くない ~俺様幼馴染みと忘れられた約束~
「稽古の方はどうだ。無理してないか?」
「うん。大丈夫だよ。役者さんも、スタッフさんもとても優しくて。なんかアットホームな雰囲気だから、楽しくやれてる」
「そうか。自分の役はつかめたか」
「んー……それは難しいかな。主人公の春はんを殺そうとする暗殺者の役なんだけどね、どんな思いでそうなったのかなって考えてる。けど、一言だけだから、あまり語られる役じゃなくて。和歌さんに聞いてみようと思ってるんだ」
「暗殺者……また、すごい役どころがきたな。でも、まぁ、凄腕の暗殺剣士っていうのもかっこいいな」
「そうかな………」
少しずつ少しずつ。
いつもの雰囲気に戻っていく。笑顔に柔らかさが見えてくる。彼との距離も戻っていくのだろう。大丈夫。
けれど、モヤモヤした気持ちもある。どうして、離れていってしまったのか。その理由が知りたかった。
「………響?どうした?」
急に黙り込んだ響を、心配そうに覗き込む千絃。その顔を見つめれば、きっと彼なら教えてくれるだろう。そう思い、彼に訪ねる事にした。
「ねぇ、千絃?千絃はどうして、私の事さけてたの?私、何かしたかな?」
「…………悪かった。俺が幼かったからだな」
「………どういう事?」
響は彼の言葉の意味がわからずに首をかしげると、千絃は気まずそうに髪をかきあげながら、視線をゆっくりと向けた。