漣響は強くない ~俺様幼馴染みと忘れられた約束~
「………やっぱり舞台を降板して欲しい」
「千絃………」
「あいつの目的は響の演技じゃなくて、おまえ自身なんだってわかっただろ?」
「それは………でも、やるって決めたことだし、もう稽古は始まっているのよ。今さらやめられない。それに、私がやめたらゲームの評判にも影響が出るかもしれないじゃない」
やはり、千絃は舞台に出るのをよく思っていなかったのだ。元々賛成ではなかった事に、和歌の事が重なったのだ。更に、やめるべきだと思うのも仕方がないかもしれない。
けれど、響は稽古も始めているし、自分を必要としてくれる人もいる。今更やめるなど言えるはずもなかった。それに、途中でやめる事は響はしたくなかった。
「お願い、私にこの仕事を最後までさせて」
「………おまえが舞台をやらなくても、俺たちのゲームは売れる。響の力を借りなくても成功するんだ」
「…………っっ………」
千絃は自分の事を思って言ってくれた言葉なのかもしれない。
けれど、響の胸に何かがグサリと刺さった気がした。
自分は役に立っていない。必要とされていない。
そう言われたような気がした。