漣響は強くない ~俺様幼馴染みと忘れられた約束~



 「…………帰って………」
 「響………おまえ、泣いて……」


 気づくと響は泣いてしまっていた。
 それほどに心が悲鳴を上げていたのだ。
 自分は千絃の力になれていない。私のしたことは、きっと彼にとって迷惑な事だったのだ、と。
 千絃の手が自分に伸びてきたのに気づいて、響は顔を布団に隠し、声と態度で彼を拒絶した。


 
 「触らないでっ!!」
 「…………」
 「もう、帰ってよ!……私の前から勝手に居なくなって、1番辛いときにいなくなったくせに!!そんな事言わないでっ!!」


 響は咄嗟にそんな事を言ってしまった。
 彼と再会する前の事は、もう解決したはずなのに、また持ち出してしまったのだ。もう、気にしてなどいないはずなのに。その頃の千絃の気持ちを理解したはずなのに………。
 けれど、1度口から出た言葉は削除出来ない。
 響は彼の反応が怖くて、ベットに顔を埋めたまま動くことが出来なかった。
 すると、ベットがギシッと鳴った。


 「………わかった」


 それと同時に千絃の色のない声が聞こえた。
 そして、彼の足音が遠ざかり、バタンッとドアが閉まる音がした。


< 154 / 192 >

この作品をシェア

pagetop