漣響は強くない ~俺様幼馴染みと忘れられた約束~
「…………帰って………」
「響………おまえ、泣いて……」
気づくと響は泣いてしまっていた。
それほどに心が悲鳴を上げていたのだ。
自分は千絃の力になれていない。私のしたことは、きっと彼にとって迷惑な事だったのだ、と。
千絃の手が自分に伸びてきたのに気づいて、響は顔を布団に隠し、声と態度で彼を拒絶した。
「触らないでっ!!」
「…………」
「もう、帰ってよ!……私の前から勝手に居なくなって、1番辛いときにいなくなったくせに!!そんな事言わないでっ!!」
響は咄嗟にそんな事を言ってしまった。
彼と再会する前の事は、もう解決したはずなのに、また持ち出してしまったのだ。もう、気にしてなどいないはずなのに。その頃の千絃の気持ちを理解したはずなのに………。
けれど、1度口から出た言葉は削除出来ない。
響は彼の反応が怖くて、ベットに顔を埋めたまま動くことが出来なかった。
すると、ベットがギシッと鳴った。
「………わかった」
それと同時に千絃の色のない声が聞こえた。
そして、彼の足音が遠ざかり、バタンッとドアが閉まる音がした。