漣響は強くない ~俺様幼馴染みと忘れられた約束~
32話「サプライズ」
32話「サプライズ」
「デ、デートですか?」
突然の誘いに響は動揺して、舌が上手くまわらなくなってしまう。戸惑う様子を見て、和歌は楽しそうに笑っている。ワタワタしている響を見るのが面白いため、わざと言っているのではないかと思ってしまう。
「えぇ。もし、よろしければ」
「私、恋人がいますのでそれはちょっと………」
「では………舞台に必要な買い出しを手伝ってくれませんか?」
「買い出し………」
「はい。足袋で稽古をしていますから、やはり傷んでしまって。買い足したいのです。あと、頼んでいた着物も取りに行きたくて。デートではなく、上司の付き合いというのではダメですか?」
「………そういう事ならば………」
デートではない仕事上での依頼なのではあればいいだろうそう思って返事をする。けれど、もしこれが千絃に知れたら怒られるかなと思いつつも、彼との現在の状況を考えると、またため息が出そうにもなる。もう何週間も話してもいないし、2人だけの時間もないのだ。
けれど、響が舞台の仕事を辞めない限り、彼は許してはくれないのだろう。そのため、響からはどうもする事が出来なかった。