漣響は強くない ~俺様幼馴染みと忘れられた約束~
「では明日……待ち合わせは玄関でいいですね。同じマンションに住んでいるのに待ち合わせもないですが」
「確かに、そうですね」
クスクスと笑うと、和歌は目を細めて安心そうに微笑んだ。
「………よかった」
「え………」
「私があなたに告白してから、私と話す漣さんは少し緊張しているようだったので……そうやって笑ってくれて安心しました」
「………すみません……」
「いいんですよ。私が悪いのですから………では………」
そう言って、和歌は部屋から出ていってしまった。静かな部屋に残された響は和歌が言う「悪い」という言葉の意味がよくわからなかった。
「これはデートじゃないから大丈夫。………それに、もう恋人と言えるのかわからないもの……」
連絡を取り合うこともなく、目があってもどちらかが逸らし、話すときも気まずい雰囲気に包まれ、恋人のように触れあうことすらないのだ。響が不安になるのも仕方がない事だった。
けれど、解決方法がわからないままに、ずるずるとここまで来てしまった。
もう、付き合っていると言えるのだろうか。
彼の中では、自分は恋人ではないのでは。そんな考えが少しずつ増え始めていったのだ。
恋人と上手くいっていないから、他の男性と会うのだろうか。それは違う。仕事だから、そんな思いをしなくてもいいのだ。
そう自分に言い聞かせて、何とか気持ちを保っていた。