漣響は強くない ~俺様幼馴染みと忘れられた約束~
35話「晴れ舞台」
35話「晴れ舞台」
それからの響はますます忙しい日々を送るようになっていた。
モーションキャプチャーの仕事が少し落ち着いてきたこともあり、響は舞台の仕事に時間をとる事が多くなった。
通し稽古も多くなり、響も役者として参加していた。
皆の殺陣もメキメキ上達しており、響が舞台袖から見ていても感動してしまうぐらいだった。けれど、自分の番が近づくと緊張がマックスになってしまう。
今までのどんな試合よりも緊張すると思っていると「失敗しても舞台では負けないから、大丈夫ですよ。俺達がフォローするで思いっきりやってきてください」と、春に言われて少しだけ気が楽になった。
目まぐるしい時間を過ごしているうちに、あっという間に公演初日を迎えた。
宮田春という人気俳優を起用し、響とのインタビュー番組も好評だったからか、2週間の舞台は全て完売していた。
「いっぱい入ってるよ………」
「満員御礼ですからねー!楽しみだなー」
「私は緊張で泣きそうだよ」
「何言ってるんですか!そんな綺麗なんだからお客さんに見てもらわなきゃ!それに、恋人さんも呼んでるんですよね?」
「………でもまだ来てないから、来ないかもしれない」
響はステージ袖から関係者席付近を見つめながらそう言うと、ついため息が出てしまう。