漣響は強くない ~俺様幼馴染みと忘れられた約束~



 「…………俺はおまえをいじめたつもりなんてない」
 「いじめてるじゃない!キスなんて………何とも思っていない私にキスするなんて。からかって私の反応を見て楽しんでるんでしょ………」
 「っ!………そんなつもりじゃないって言ってるっ!!」


 大声を上げたと思うと、千絃は響の肩を掴み抱きよせてくる。言葉は乱暴なのにその力はとても優しく、響の怪我をいたわっているのがわかった。それが、今の千絃らしさを感じさせる。


 「離してっ………そういう事をして私を惑わさないで……」


 千絃の胸を右手だけで押すが、片手では千絃に到底敵うはずもない。響はドンドンッと胸を叩くけれど、びくともしない。それどころか、彼の腕は強くなり、響は千絃の体に強く押しつけられる。彼の香りに包まれて、どうしていいのかわからなくなる。


 「おまえを仕事に誘ったのは、俺がおまえの剣が好きだからだ。昔から凛とした強さとしなやかさがとっても綺麗だと思ってた。だから、いつか会いたいって思ってた」


 この人はどうして本人の目の前で綺麗とか好きだと言えてしまうのだろうか。
 響はその言葉にドキドキしつつも、それを隠すしか出来なかった。抱きしめられて、そんな事を優しく話されたら誰でも少し期待しまうのだから止めてほしいものだ。



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