漣響は強くない ~俺様幼馴染みと忘れられた約束~
「そんな事言われたことなかった」
「こんな恥ずかしい事そんなに簡単に言えるはずないだろ。それに、モーションの時に少し話しただろ」
「………キスしてくるのは何で………」
「おまえ………本当にそれわかんないのかよ」
耳元でため息が聞こえてくる。
千絃は「……わざとなのか?言わせたいって事なのかよ」と、何かぶつぶつと言っているので、響は「何?」と顔を上げて彼を見上げる。
すると、悔しそうな顔をした後に千絃は、ゆっくりと顔を近づけてくる。
キスをされると思ったけれど、その唇は頬に落とされ、そのまま響の耳元に彼の口が寄せられる。
「俺の初恋も、好きな奴もずっと変わらずにおまえだけだ」
時が止まったように感じるとはこんな時なのだろう。
響はまるでスローモーションのように、彼をゆっくりと見上げた。その言葉の意味を理解するのに時間がかかり、思わず千絃の顔をまじまじと見てしまう。見慣れた無表情よりも少しだけ柔らかく微笑んだ顔。ほのか赤くなる頬は彼が照れているのがわかる。
それを頭の中で考えた結果に彼は嘘をついているわけではないと理解した。もちろん、こんな嘘をつくような人間ではなのは知っている。
「………何で今さらそんな事言うのよ……そんなのおかしいよ……」
「昔から好きだった。剣道に真剣な所も、自分は強いからって泣かない所も。本当は病気の事で不安だったはずなのに、いつも笑顔な所も。そして、俺だけに弱い所を見せてくれるのが嬉しかったんだ」