漣響は強くない ~俺様幼馴染みと忘れられた約束~
千絃が自分に想いを寄せてくれている何て思ってもいなかった。考えもしていなかった彼の気持ちに、響の心は揺れていた。
自分の気持ちを伝えるだけになるだろうと思って覚悟していた。
もう職場が同じの幼馴染み、というだけの関係になってしまうはずだと思っていた。
それが彼が自分を好いてくれている。
信じられない事だった。
けれど、彼が抱きしめてくれる温かい体温とゆったりとした口調。少し早くなった彼の鼓動。それらが真実だと告げている。
「おまえは違った?俺の事、好きじゃなかった?」
「………好きだった。………離れたくなかった。忘れようとしてたの………」
やっと自分の本当の気持ちを言葉に出来た瞬間に響は涙がこぼれた。
そんな響を千絃は優しく微笑みながら見つめ、指で涙をすくってくれる。
「やっと言ってくれた」
その笑みはどこか昔を思い出す少年のような笑みで、響はまた胸が高鳴るのを感じた。
「好きだからキスしたい……今、してもいいか?」
「………前からそう言って欲しかった」
「そうか、悪かった………。大切にする、絶対に。好きだ、響。」
「私も………」
今までのキスの中で1番優しくて、気持ちを確かめ合うようにゆっくりとした口づけは、響の涙を溶かしていくほど幸せなものだった。
長いながい2つの片想いは、今やっと結ばれた。