漣響は強くない ~俺様幼馴染みと忘れられた約束~
「おまえも取れるだろ?今回は負けたけど、強いんだから」
「………うん。そうだよね」
「今日はどうした?いつもみたいなスピード感がなかったけど……体調悪いわけじゃないだろ?最近、少し変わったなとは思ってたけど、何かあったのか?」
響は優勝を狙える強さであり、千絃は今回は優勝すると確信していた。けれど、負けた。
千絃が響に話した通り、最近の彼女は少し変わった。呆然として考え事をしているかと思えば、火がついたように練習に没頭し、華麗な技を見せていた。心配していたけれど、それでも響から話してくれるのを待とう。そう思っていたのだ。
けれど、響は何も話してくれず、ずっと夢見てきた舞台で負けてしまったのだ。悲しんでいる響を見ていたら理由を聞くしかなかった。
千絃の言葉に驚き、目を大きくした響は一瞬口を開きかけた。けど、またすぐに閉じてしまう。
「………何でもないよ。今日は、よみが甘かったみたい。私もまだまだだから………また来年頑張るわ」
「………そうだな。俺も同じだ」
響は真っ直ぐ前を見て、夕暮れ色に染まる川を「綺麗ね」と眺めていた。
千絃はそんな彼女の方が綺麗だなと思ったけれど、口がさけてもいけるはずがなかった。
この想いは、日本一になったら言おうと決めていたのだ。