漣響は強くない ~俺様幼馴染みと忘れられた約束~
大会が終わった後も2人の日常は変わらない。
一緒に高校へ登校し、放課後は剣道をして、帰り道は河川敷や公園で殺斬をして遊ぶ。休みの日は道場に行って稽古をする。剣道漬けの高校生活。剣道が好きであったから続けられたのもあるが、隣に響が居たからというのが大きかっただろうと、今も昔も思っていた。
そんなある日。
この日は特に響の様子がおかしかった。
いつものようにホームルームが終わった後に響の所へ向かうと、何故か部活には行かないと言い始めたのだ。
「え……練習行かないのかよ?体調悪いのか?」
「違う……今日は、行きたくないの………」
剣道をしたくないと言った彼女の言葉が衝撃的で千絃は唖然としてしまった。響がそんな事を言った事は1度もなかった。熱がある時でも怪我をした時でも、試験期間中でも「稽古したい!」と騒ぐぐらいなのだ。そんな彼女が練習を自ら休もうとしているのだ、真夏に雪でも降るのではないかというほどに信じられない事だ。
「ひび………何言ってるんだ?あんなに好きな剣道をしなくなるなんて、頭でもぶつけたか?」
「違う………私だってしたくない時があるわ!千絃には関係ないでしょ?放っておいてよっ!」
「………ひび………」
千絃が響の腕をつかんで歩みを止めようとしたが、響は大声を出して抵抗し、千絃の手を振りほどいた。
自分の声と行動に驚いたのか、怒りの表情からハッと驚きに変わり、そして泣きそうな顔を見せた後に響はその場から逃げ出した。
短いスカートをなびかせながら、すらりと長い脚で千絃の側から去っていく。