漣響は強くない ~俺様幼馴染みと忘れられた約束~
19話「昔の匂い」
19話「昔の匂い」
「本当におまえはすぐ泣くな……」
一通りの話を終え、準備してくれた弁当を食べた後にはすっかり夕方になってしまっていた。お腹も空かないので夜になっても、テレビを見たり、昔の話をしたりして過ごしていた。
高校の時にケンカをしたまま別れてしまってからは、このように千絃の部屋で手を繋ぎながら話をする事など想像もしていなかった。
それなのに、今ではこのようにソファに座り彼の肩に頭を預け、彼の鼓動を聞きながら安心していられるのだ。
そして、時折彼の手が伸びてきて頬や髪に触れられたり、キスされたりしている。
そんな甘い雰囲気を実感していると、本当に恋人になったのだな、と幸せな心地になれた。
そんな穏やかでもあり、初恋が実った時の甘酸っぱさも感じながら、夜を彼の部屋で過ごしていた。
先ほど言っていたように、千絃は響を本当に還すつもりがないようだった。
そして、突然そんな事を言ったのに、きょとんとしながら彼を見つめる。
すると、千絃は少しだけ腫れている響の目の下に優しく触れた。響はくすぐったさを感じで思わず目を閉じてしまう。