漣響は強くない ~俺様幼馴染みと忘れられた約束~
「俺と再会してから、おまえは泣いてばかりだなと思って。昔も俺の前ではよく泣いていたから、大人になっても変わっていないんだな、と思ったんだ」
「私だってそんなに、すぐに泣いたりしないよ。千絃の前だから泣いちゃうし、少し甘えちゃうの」
「………それがずるいんだよ」
「なんでずるい……んっっ!?」
気づくと、千絃は響の体を抱きよせて、キスをしたままソファに優しく押し倒していた。傷を心配しているのか、彼は抱きしめるときに、大事なものを扱うときのように、とてもふんわりとして触れてくるのだ。それが嬉しくも少しだけ切なかった。
暫くの間、彼から与えられるキスの雨に翻弄されてしまう。少し涙が滲んできた頃に、千絃はやっと唇を離してくれるのだ。
「………千絃………」
「俺の前だけ泣けるなんて、そんな嬉しいこと言われて我慢できるはずないだろ。………今の顔だって反則なのに」
「そっそれは千絃がキスしたから……」
響は自分がどんな顔になっているか、容易に想像出来た。千絃からの快楽に、目は潤み、体は熱を帯びている。きっと、次を快楽を求めているような視線で彼を見てしまっているのだろう。
千絃のせいだと恨みながらも、心の奥ではキスが幸せで、もう1度と願ってしまっているのだから。
千絃はその気持ちさえもわかってしまっているのではないかと少し恥ずかしい。