近くて遠い君へ
ボーっとしている結花に男は顔を覗かせる。
「おーい?結花ちゃん?」
「えっ?‥‥‥名前‥なんで‥」
男は、今日初めて会ったのに結花の名前を知っていた。
驚いて見上げる結花に
男は笑い掛けた。
「‥はは。俺、いつもこれより遅い電車に乗っててさ、結花ちゃん、いつも彼氏と電車乗ってるしょ?彼氏が結花ちゃんの名前呼んでるの聞いてたからさ」
佳晃の事‥
彼氏って‥‥
嬉しいけど
複雑だよ。
「‥‥彼氏‥じゃないです‥」
これしか
言葉が出て来なかったんだ‥。