私は不幸だ
「やっぱり、何処にも出口や窓らしきものはないね」

箱の壁を触ったり、探ったりしたが扉や窓はない。

「うん。何処にもない」

私たちはかなり親しくなった。

「どうしよう。私たちここから出られないのかな?」

不安と共に恐怖という感情も込み上がってくる。

ここから、出られなかったらどうしよう。

一生このままなのか、

「大丈夫だよ、そもそもここに居るってことはどこからか必ず入ってきたんだからさ!大丈夫。」

暖かい温もりに包まれた。

お父さん以外、初めてだ。

懐かしい温もり、一粒涙が溢れた。

優しい声と微笑んだ笑顔。

安心する。

ザザッ

『えぇ〜そこの二人、いちゃつかないでくれる』

どこからか流れる機械ボイス。

そして、抱きしめられた手の温もりと体の温もりは一瞬にして切り離される。

「あ、ごめん。」

「ううん!私こそなんか、不安な事言ってごめん」

照れながらも私は涙を手で拭った。

『だ、か、ら!いちゃつかないでよ〜!』

子供なのだろうか。

「あの、貴方は誰ですか!そして、ここはどこですか?早くここから出してください!」

汐君がどこから流しているかもわからない機械ボイスに喋りかける。

『も〜、そんないっぺんに質問しないでくれる。ちゃ〜んと、僕から説明するからさ。
まず、僕が誰かだよね。う〜ん昨日行ったんだけどな、覚えてないの?僕はこのゲームの司会者Xだよ!昨日電話で名乗ったよね、君達は鶏か何か?』

X。

「ねぇ!昨日貴方、後日お迎えにまいりますって言ったよね。もしかして、貴方は私のお父さんなの!?」

Xは、昨日電話で後日お迎えにまいりますって言った。

そして、迎えにきたのは私のお父さん。

もし、Xがお父さんだったら何の為にこんなことを。

『ブッ!あっはははは!んなわけないじゃん!偽物。普通そんな単純なことしないよ〜。安心させる為、それに僕が迎えに行ったって怪しまれるだけでしょ〜。だから、だよ。もっと頭を使わないとこの先大変なことになるよ〜天月寧々さん。』

偽物。

そんなことまでして、この人は何がしたいんだろうか。

でもそしたら、汐君の迎えは誰が。

私達は目を見つめる。

汐君も私が言いたいことはなんとなく分かっているようだった。

「僕の所には、大好きなおばあちゃんがきたよ。」

おばあちゃん。

汐君にとって、安心する人。警戒しない人。

『はいは〜い!お喋りは終わり、次はここがどこかだよ。ここは白い“箱”の中。そして、この箱は君たちの箱以外にもあと、3つあるんだ〜!そして、この箱は未知の世界!優秀な警察でもこの場所を特定することはできない!凄いでしょぉ〜!』

私たちが居るこの箱は私たちの他にもあと3つある!?

てことは、私たち以外にもまだ人はいる?

そして、この箱が未知の世界。

言ってる意味がわからない。

喋り方で分かったけど、この子はまだ子供なのかもしれない。

何というか、何をするかわからない好奇心旺盛の子供。

『は〜い!じゃあ次ね、森永汐君が言ってたけど、ここから出すこと、脱出は不可能だよ〜』

「どうしてですか!」

『どうしてって、そこまで説明しないと分かんないの〜本当に脳が鶏だね君。君たちに送ったメール。inミッションズ☆支配ゲーム。もうこれに手をつけたら逃れることは無理だよ〜。』

手をつける?

いや違う。

無闇矢鱈に送りつけられたメールだ。

いかにも、手をつけろ!と言っているように。

私は、手をつけてはいない。

「でも、私は手をつけた。というよりも、無理やり脅され手をつけたという方が正しいんですが」

無視したメール。

そして、脅すように何通も送られてきたメール。

どう考えても、私からは手をつけてはいない。

そして、第一のメンバーに当選と書いてあった。

何かに当選した記憶もないし、どう考えても偽のメールだとしか思わない。

『へ〜。たまには惜しいことゆうねぇ〜、でも天月寧々ちゃん。君、言ったよね“あの子達に復讐がしたい”ってさ!僕は君の願いを叶えてあげただけだよ!だから、手をつけたのも君。僕に願ったのも君。
そして、森永汐君。君も僕に願った“もう死にたい。誰か助けて”って。僕は二人の願いを叶えてあげただけ!』

あの子達に復讐がしたいとは願ったけど、この人は神の何でもない。

それに、貴方には願ってない。

『まあ、とりあえず、このゲームに手をつけてしまった。電話をかけてしまった以上、このゲームをクリアするまで君達は、、、わかるよね☆』

このゲームをクリアするまで君達はこの白い箱から出られない。
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