私は不幸だ
私達が話をしていると、急に寧々ちゃんが倒れた。

「ありゃ?」

私はシートベルトを外し、前の席にいる寧々ちゃんの方に行った。

「寧々ちゃん?!」

口元に手を当てて、息があるから確認する。

スゥ

(息は、、ある。)

ひとまず安心。

私はひとまず寧々ちゃんを1番後ろの席に乗せて少しでも広い空間にしてあげようと、Xを無理やりどけて寧々ちゃんを抱える。

「よいしょ、」

お姫様抱っこ。

と言うやつだ。

「おぉ!流石空手選手!力持ちぃ〜!」

Xの声を無視して寧々ちゃんを1番後ろの座席に寝転がらせた。

そして、一息ついて。

「説明してくれるのよね。X」

Xに鋭い眼差しを向けた。

「しょうがないなぁ〜!後、5分ちょいで第一ステージにつくと思うからそこで説明してあげるね!」



五分後。

「もう着くねぇ〜!」

無言のままの五分が過ぎてバスが何処かに到着した。

「着いたか、おいこの2人はどうする?」

高野君が嬢薙さんと北山君の方を指さした。

嬢薙さんは北山君に寄りかかりながら2人ともぐっすりと眠っている。

「もちろん起こすよ」

Xはそう言うが、もし自分の意識的に起きず私達自身が副作用が入っている人を無理やり起こしてしまうと、副作用の反応が起こってしまい、脳震盪になるかも知れない。

副作用の反応が強ければ強いほど無理に起こすのはリスクが高すぎる。

そして、酷い場合は死。

Xはそれをわかっているのだろうか?

まだ、10歳という年齢でそもそも親は居るのだろうか?

これ以上考えれば考える程謎は深まっていくばかりだった。

取り敢えず今1番正しい判断は。

「起こさない方がいい」

起こしさえ居なければ、寧々ちゃんもまだねてるし自分自身の意識で起きてくれれば。。

「何で?」

Xはこちらを向き首を傾けた。

「その2人私たちより多くガスを吸っているかもしれないし、もし無理やりにでも起こそうとすると副作用の反応が起こってしまうからよ。」

私は腕を組みながら説明した。

「ふ〜ん。詳しいね」

Xは小さい体を前のめりにしてダンボールから少し見える目を私に向けた。

「それぐらい、当たり前よ。。こんなことぐらい知っておかないとこの世の中やっていけないわ」

私がXから、目を逸らしてもXはまるで獲物を捉えたライオンのように私の顔をじっと見つめた。

「あの、早くここから出たいんです」

高野君が、そう言うとXは「ごめんごめん」と言いながら、私を見つめる目を逸らした。

「んじゃ宮野愛里七さんと高野央紀君、2人運ぶの手伝ってもらってもいい?」

Xは私たちに向かって手招きをする。

私は嬢薙さんを抱えて、Xと高野君は2人がかりで北山君を抱えて、バスの扉の前に来た。

「よいしょ、」

Xは一旦北山君から、手を離し自分のポケットから鍵を取り出し扉の隣にある小さな鍵穴に鍵を差し込んだ。

ガチャ

そう音を立てて扉が開く。

ギィィ、という音と共に視界が広げてくる。

「え、、、」

「んだこれ?」

私と高野君は見つめあってもう一度扉の先の下を見た。

「地面、あるのか?」

扉の先に見える景色は、白い霧がかかった真っ白な場所。

足元には本当に足場があるのか?と思うぐらいの霧で私たちは一瞬言葉を詰まらせた。

「んじゃ行くよ〜!」

Xがそう言う。

「お、おい!北山を俺とお前で持ってんだから一緒に1歩バスから出るんだよな」

「そうだけど?」

キョトンと首を傾げた。

「地面あるのか?この霧の下には」

「あるよ!なかったら死んじゃうじゃん!」

ぷぷっと笑う仕草をして「ほら早く〜」とバスの扉の前に2人が立った。

「僕達が下に落ちたら宮野愛里七ちゃんも落ちてね!」

「わ、分かったわ」

あれ?

今X、

落ちて。

って言わなかった?

「よし、行くっよぉ〜!」

「ちょっ!ちょっと待って!!!」

私がそう言う間際、2人は足を1歩。出していた。

その瞬間

ビュンと言う風の音を立て2人が落ちた。

「う、うわああああああぁぁぁぁ〜!!」

高野君の叫ぶ音がどんどん。小さくなっていく。

嘘。

まって、ほんとに落ちた?!

え、死んだ?

え!?

どうゆうこと?

その時下から

「みーやーのー!あーりーなーちゃーんーー!はーやーくーおーりーてーきーて!」

と言う声が微かに聞こえた。

生きてる?!

ほんとに寧々ちゃんが倒れる理由分かるよ。

混乱しすぎ、ゲームの世界かよ

私はXの声を聞いて呆れるがまま、嬢薙さんを抱えて1歩足を出した。

ビュン!!

風が私の全体に張り付くかのように私はそのまま落下していった。

(ほんとに、意味不明なんだけど)

私は真顔のままそのまま。バンジーのように落下し続けた。

トッ

私は

「着地した?」

着地した。

あの高さから

私は上を見上げる。

あれ?

ちょっと待って?

なんか忘れてるような、、

寧々ちゃんは?

「ッちょっと!X、寧々ちゃんバスの中に置いてきちゃったよ!?大丈夫なの?」

まさかの寧々ちゃんをバスの中に置いてきてしまった。

この高さ。

流石に寧々ちゃんが今、都合よく目を覚ますとは思わない。

どうしよう。

「大丈夫!僕が行くから!」

え?

「何言ってんだってこの、たか、さ、、、」

私はXを見つめたまま上を向いていた。

飛んだ。

Xが。

あいつ絶対人じゃない。

だって、

「飛びすぎ!!!」

高くてもこのバスからこの地面までビルの120階ぐらい。

すみません。

例えが悪すぎました。

このバスからこの地面まで最低でも700m以上はある。

いやまぁ、Xがその高さまで飛んでることもびっくりなんだけど、この高さから飛び降りて普通に着地できて、普通に無傷な私も十分人間じゃないよね。

しかも、人も抱えて。

高野君も無傷だし。

まぁ、高野君がな無傷なの。何となくわかるよ。

あのXと、一緒にいたんだし、どうにかなると思うけど。

でも、私の場合は違くない?!

(やばい。頭痛い)

私はそのまま抱えていた嬢薙さんを地面に下ろして自分も地面に座り込んだ。

「高野君?愛里七ちゃん?」

後ろから聞き覚えのある声が聞こえて私と高野君は同時に後ろを振り返る。

「ッ、、、!」

私は歯を思いっきり噛んでいた。

腹が立つ。

騙した。

この、人が。

私たちを、

「森永君!!どうゆうこと?!私たちのこ騙してたの?!」

森永汐。

「違う!聞いて!僕は、僕は、、、」

言葉がどんどん掠れていく森永君。

泣きたいのはこっちだよ。

目から涙がボロボロと零れていた。

彼の姿を見るなりもう、これ以上攻めることは出来なかった。

だから、その代わり彼の話を聞いた。
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