何度忘れても、きみの春はここにある。

プロローグ



『何ひとつ、忘れたくない』。

 最後の投稿は、その一言で終わっていた。
 文章と一緒に添えられていたのは、肩甲骨の高さまで伸びた髪が、春風に舞い上がっている見知らぬ女の子のうしろ姿。
 背景には勿忘草が咲きほこっていて、彼女はそれを体育座りで眺めている。
 淡い青色の世界に、ぽつんと座っている彼女の姿を見て、理由も分からず涙が出た。

 ……教えて。
 この涙の理由を、誰か教えて。

< 1 / 135 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop