何度忘れても、きみの春はここにある。
すると、ばちっと彼と目があって、見んな、と頭を小突かれたので、私はようやく言葉を口にした。
「せ、瀬名先輩……。第一回目の記憶のリハビリ、しますか」
私の提案に、瀬名先輩は一瞬目を丸くして、私の顔を見つめた。
私はリュックから、常備している大好きなマシュマロを取り出して、今日のランチで使わなかった割り箸に刺す。
せっせとマシュマロ棒を作る私を、瀬名先輩は白けた表情で見つめている。
「はい、これをストーブに近づけてください」
「俺、甘いの嫌いなんだけど」
先輩の嫌そうな反応を押し切って、私は無理やり手にそれを持たせた。
「どうぞ」
「お前、これが大切な記憶になると思ってんのか。舐めてんな」
無表情で文句を吐き捨てる瀬名先輩の横で、私は割り箸につけたマシュマロを、ストーブの前でくるくると回転させる。
薄茶色のこげが広がっていくのを見つめながら、校内の有名人と一緒に焼きマシュマロを作る自分の姿がいまだに信じられない。
こんなことが、瀬名先輩にとって大切な記憶になるなんて到底思えないけれど、今自分にできる最大のことをしてあげたいと、一瞬でも思ってしまったが故の行動だった。
「甘……。お前こんなん毎日食ってたら虫歯になんぞ」
文句を言いつつ瀬名先輩は、ひと口で焼きマシュマロを頬張る。
とろりと口の中で溶けるマシュマロは、やはり冬の寒さを忘れさせるほど幸せな甘さだった。
〇
登校してそうそうに配られたのは、進路調査書だった。
小山先生が、「書くのだる」とぶーぶー文句を言う生徒たちを宥めながら説明を始める。
「ざっくりでもいいから書いておけ。まだぼんやりとしか大学決まってないやつも、理系か文系かだけ記入しておけばいいから」
私は窓越しに、葉が一枚もついていない裸の木を見つめていた。
昨日、久々に焼きマシュマロを食べたけれど、やはりとろけたマシュマロは美味しかった。それなのに、あんなにおいしいものを、瀬名先輩は結局ひとつしか食べていない。
昨日の出来事にぼんやりしていると、突然窓の外にある光景が映った。
今は朝のホームルームの時間だというのに、どうどうと今登校してくる派手な男女グループがいた。
その中に瀬名先輩を発見した私は、ついつい目で追ってしまう。
すると、こんなに距離が離れているのに、バチッと目が合ったように感じた。
「せ、瀬名先輩……。第一回目の記憶のリハビリ、しますか」
私の提案に、瀬名先輩は一瞬目を丸くして、私の顔を見つめた。
私はリュックから、常備している大好きなマシュマロを取り出して、今日のランチで使わなかった割り箸に刺す。
せっせとマシュマロ棒を作る私を、瀬名先輩は白けた表情で見つめている。
「はい、これをストーブに近づけてください」
「俺、甘いの嫌いなんだけど」
先輩の嫌そうな反応を押し切って、私は無理やり手にそれを持たせた。
「どうぞ」
「お前、これが大切な記憶になると思ってんのか。舐めてんな」
無表情で文句を吐き捨てる瀬名先輩の横で、私は割り箸につけたマシュマロを、ストーブの前でくるくると回転させる。
薄茶色のこげが広がっていくのを見つめながら、校内の有名人と一緒に焼きマシュマロを作る自分の姿がいまだに信じられない。
こんなことが、瀬名先輩にとって大切な記憶になるなんて到底思えないけれど、今自分にできる最大のことをしてあげたいと、一瞬でも思ってしまったが故の行動だった。
「甘……。お前こんなん毎日食ってたら虫歯になんぞ」
文句を言いつつ瀬名先輩は、ひと口で焼きマシュマロを頬張る。
とろりと口の中で溶けるマシュマロは、やはり冬の寒さを忘れさせるほど幸せな甘さだった。
〇
登校してそうそうに配られたのは、進路調査書だった。
小山先生が、「書くのだる」とぶーぶー文句を言う生徒たちを宥めながら説明を始める。
「ざっくりでもいいから書いておけ。まだぼんやりとしか大学決まってないやつも、理系か文系かだけ記入しておけばいいから」
私は窓越しに、葉が一枚もついていない裸の木を見つめていた。
昨日、久々に焼きマシュマロを食べたけれど、やはりとろけたマシュマロは美味しかった。それなのに、あんなにおいしいものを、瀬名先輩は結局ひとつしか食べていない。
昨日の出来事にぼんやりしていると、突然窓の外にある光景が映った。
今は朝のホームルームの時間だというのに、どうどうと今登校してくる派手な男女グループがいた。
その中に瀬名先輩を発見した私は、ついつい目で追ってしまう。
すると、こんなに距離が離れているのに、バチッと目が合ったように感じた。