苦い飴甘すぎるアメ
1
偽りの愛情
プルルルルルルル
静まった部屋に一本の電話が鳴った
「………ッチ。」
その音にあたしは小さく舌打ちをした
「…電話だよ起きなきゃ。」
「…ん、起こしてくれてありがとな。」
女は男に携帯を渡した
男は女の頭を優しく撫でた
女は褒められ嬉しいと思ったのも束の間
携帯のディスプレイに表示された文字を見て起こして渡したことを激しく後悔した
出ないでお願い、と。
「もしもし、お前か。…うん、うん。」
女の願いとは裏腹に電話に出て楽しく話す男
面白くなくチラッと横目で時計を見る
6:09と表示された可愛らしい時計が目にうつる
「ねぇ…」
「ごめんなって。今度美味しい所に子供預けて2人っきりでディナーに行こうか。」
「……。」
あたしの声も届かないくらい楽しく話しちゃって
つまんないの
カチッ
「…フーッ」
男から離れ台所で手馴れた手つきで煙草に火をつける
「………いいな」
ぼそっ呟く