心を ほどいて ~コーディネーター麻里絵
待ち合わせたカフェに 理沙は 先に来ていた。
「麻里絵。具合悪いの?顔が 真っ青だよ。」
向かい合って座った私を 理沙は まじまじと見る。
「悪いなんてもんじゃない。昨日は バイト先で 倒れたし。」
私は 苦笑して言う。
「やだ。寝てなきゃダメじゃん。こんな所まで 出て来て 大丈夫?」
心配そうに 理沙は 顔をしかめた。
「うん。病気じゃないから。」
と答えて 不審気な理沙に
私は 祐一君のことを 全部話した。
「麻里絵と祐一君に 問題がなかったとしたら。その展開は 女だね。」
私の話しを 相槌を打って 聞いていた理沙。
話し終えた私に 一言 そう言った。
「女!?」
驚いて 理沙の顔を見る。
「しかも。たった4日で 麻里絵との別れを 決断したってことは。多分 出会ってすぐの人じゃないよ。元カノとか。そっち系だと思う。」
理沙の 冷静で的確な判断に 私は 目を見開く。
「元カノって。祐一君の 高校時代の彼女は 地元に残っているって 前に言っていたから。再会したとは 考えられないなぁ。」
「例えばさ 夏休みで こっちに遊びに来て。祐一君に会ったとかは?」
「どうだろう…ないとは 言いきれないけど。」
でも それで祐一君は 私を捨てるかな。
前に 元カノのことを 聞いたとき
” 良い思い出だけど。お互い 子供だったから。今なら その子に 惹かれないな ”
って 祐一君は 言っていた。
「大学の同級生は?ちょっと 気になっていた子に 告白されて その気になったとか。」
私は 首を傾げて 考える。
祐一君は 大学のことも 話してくれたけど。
気になる女の子がいるとか
そういう素振りは 全然 なかった。
「麻里絵。祐一君のアパート 知っているんでしょう?待ち伏せしてでも 祐一君から 理由を聞いた方がいいよ。ちゃんと納得しないと 気持ちが 切り替えられないよ。」
理沙の言葉を その通りだと思うけど。
私には 祐一君に会う 勇気はない。
祐一君の 困った顔を 見たくないし。
迷惑そうな顔は もっと見たくない。
「だめ…私 できないよ。そんなこと。もう これ以上 みじめになりたくない。」
「まだ 全然 みじめになってないじゃん。中途半端のまま 逃げたら ずっと後悔するよ。」
理沙の言うことは 正論だけど。
それが できないから 私は 苦しい。
「失恋なんてさ。どん底まで落ちて やっと 這い上がれるんだよ。これ以上ないってくらい みじめになって。顔が腫れるくらい泣いて。そうしないと 次に進めないよ。」
理沙の言う通り。
私は 泣くこともできない。
現実を 見ていないから。
だから 縋ってしまう。
もしかしたら…って。
でも 現実は 私の想像を超えた
残酷なものだった。