心を ほどいて ~コーディネーター麻里絵
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お客様が 来るまでに 打合せの準備をして。
事務所に戻った私に
事務員の薫ちゃんが コーヒーを淹れてくれた。
「私 湯沢さんの打合せ 本当に 憂鬱なんです。」
薫ちゃんは 顔をしかめて 私に言う。
「わかるよー。あの子供達 酷いよね。」
私より 2才年下の 薫ちゃんは
明るくて しっかり者。
打合せの間 子供さんのお世話も よくやってくれる。
「湯沢さんって 2人とも 学校の先生なんでしょう?自分の子供くらい ちゃんと しつけてほしいですよね。」
湯沢さんは 打合せのたびに 3人の子供を 連れてくる。
3人とも 小学生。
5年生の長男 3年生の次男 1年生の長女。
真剣に 打合せをするために
小さなお子さんでも 預けてくる人が多いのに。
小学生の3人は 家で 留守番できるはずなのに。
湯沢さんの子供達は 恐ろしく 行儀が悪い。
モデルルームの中を 走り回り。
展示してある備品を いたずらしても
ご主人も 奥様も 子供を注意しない。
薫ちゃんは こっそり 子供達を見張って。
子供達が 散らかしたものを 片付けて回る。
「あんな大きい子 どうして 連れてくるんだろうなぁ。」
店長が 不思議そうに 私達を見る。
「あの子達 親がいるから 誰も叱らないって わかっているんですよね。タチが悪いですよ。」
私も 湯沢さんには ウンザリしていた。