心を ほどいて ~コーディネーター麻里絵
レストランを出て エレベーターに乗ると
「本当は 俺 今夜 麻里絵ちゃんを 1人にしたくない。でも 麻里絵ちゃん 1人になりたいでしょう?」
苦笑混じりに 田辺さんは言う。
ずっと長い事 誰にも 話せなかったこと。
言葉にして 辛い記憶を 確認するのが 怖くて。
でも 話してみたら 案外 平気だった。
むしろ 少し 心が軽くなったみたい。
「そうね…」
私も 苦笑して 田辺さんを見つめて。
ホテルを出て 腕時計を見る。
まだ 9時を過ぎたばかり。
このまま 帰っても 眠るには早いし。
「ねぇ。もう少しだけ 一緒にいてくれる?」
1人が好きな 寂しがり屋。
田辺さんなら 何も言わずに そばにいてくれる。
きっと…
「少し ドライブしようか?」
ゆっくり言う 田辺さんに 私は 頷く。
私の壁は 崩れはじめていた。