心を ほどいて  ~コーディネーター麻里絵
9

いつもより 長い打合せに 疲れ気味の湯沢さんに

私は 早いテンポで 打合せを進めて。

いつもより たくさんのことを 決められて。

次回 変更されないことを 願いながら。

湯沢さんを お見送りして。


私が 事務所に戻ると

田辺さんは 薫ちゃんと一緒に

モデルルームを 片付け始めた。


「ようやく あと2回で 終わりそうです。」

店長に 笑顔で 挨拶をする私。


車に乗って スマホを開くと

『車 止めたら 駅前のロータリーにいて。俺が 拾うから』

田辺さんから ラインが届いていた。

『了解しました』

ワザと事務的な 返事を返して。

私の 小さな 抵抗。


でも 待ち始めて まもなく 

田辺さんの 車が 入ってくると

自然と 笑顔になってしまう。


「暑い所で 待たせて ごめんね。」

「ううん。車の中で 時間調整して 外に出たから。大丈夫。」

私が ご馳走するはずなのに。

車を 走らせる田辺さん。


「行先の 決定権 私には ないの?ご馳走するのに。」

「ハハハ。麻里絵ちゃんの時間が お礼だから。ご馳走は 溜めておいて。倍返し?」

楽しそうに 田辺さんは 笑う。

「えー。それじゃあ 悪いわ。」

「いいって。気にすんなよ。」


しばらく 車を走らせて

田辺さんは 郊外の イタリアンレストランに 車を停めた。





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