心を ほどいて  ~コーディネーター麻里絵

「私 友達に 何度も言われたの。もう一度 彼に会って ちゃんと話しなって。でも 勇気がなくて 逃げてしまったの。だから いつまでも 私の中で 完結できなくて。」

「人って 色々だから。その友達みたいに 前向きに動ける子ばかりじゃないよ。その時 麻里絵ちゃんは すごく苦しくて。毎日を 過ごすだけで 精一杯だったんでしょう?それで いいんじゃない?学校だって 投げ出さなかったし。彼氏取った子が いるのに。よく頑張ったよ。だから 今の麻里絵ちゃんが いるんだよ?ねっ。」

「みんなに 助けられたから。大学でも バイトでも。」

「それはさ。麻里絵ちゃんの人柄じゃない?麻里絵ちゃんが 誠実だったから。みんな それがわかるから 助けてくれたんだよ。自分を苛めすぎたら ダメだよ。」


田辺さんの言葉は 私の胸に沁みる。

そんな風に 考えたことは 一度もなかった。

弱い自分が 歯がゆくて。

みんなに 迷惑をかける自分が 情けなくて。


でも…

「それに私 男の人が 怖いの。好きになっても 突然 消えてしまいそうで。」

「人の心って 縛れないから。いくら約束しても 心が 変わることは あると思うけど。でも それは 男の人だけじゃないよ。女の人だって そうじゃない?逆だって あるんだよ。」


田辺さんの 言葉は 私の胸に刺さる。

そんな風に 考えたことは 一度もなかったから。


いつの間にか 食事は終わっていた。





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