心を ほどいて ~コーディネーター麻里絵
10
駅前で 田辺さんの車を 降りる私。
「車2台って 不便だね。家まで 送ってあげられない。」
優しく言う田辺さんに
「大丈夫よ。もう大人だもん。」
答える私の目は きっと甘く 潤んでいた。
「なんか 心配。後ろ付いて 送っていくよ。」
「いいの?遠回りじゃない?」
「たいしたことないよ。」
並んで 走り出した車。
ルームミラーで 後ろを確認して。
そこに 田辺さんの ヘッドライトが 見えるだけで
私は 1人でも 笑顔が浮かんでくる。
誰かに 守られるって こういうこと?
しばらく 忘れていた感覚。
ずっと 1人で 頑張ってきたから。
駅から 私のアパートまでは 20分くらい。
私が 車を 駐車場に停める間
田辺さんは ハザードを灯して 待っていてくれた。
「どうもありがとう。」
窓を下げた田辺さんに 私が言う。
「おやすみ。麻里絵ちゃん。」
笑顔で 手を振る 田辺さん。
本当に 大丈夫?
また 辛い思いを するかもしれないよ?
でも 好きになる気持ちは 止められない。
今ならまだ 引き返せるよ?
ゆっくり首を振って
私は アパートの鍵を開けた。