心を ほどいて ~コーディネーター麻里絵
特別 大きくもない絵だけど。
その 圧倒的な青に 心が引き込まれて。
” 海辺の母子像 ” と書かれた ピカソの作品。
何種類もの青。
空? 海? 夜? 未明?
描かれた人物の 表情のせいか
絶望を感じさせる 悲しい青。
私の体は 雷に打たれたように
足が竦んで 動くことができない。
ただじっと。絵を見つめ続けて。
呼吸も 浅くなるほど。
身動きも できずに。
ふと 一点の赤が 私の心に 飛び込んでくる。
絶望しか 感じなかった青が
まるで 夜明けのような 希望に変わり。
軽い 身震いの後 大きく 息を吐くと
私の肩に 純也が そっと手を置いた。
純也の存在さえ 忘れて 絵を見入っていた私。
ゆっくり振り向くと 純也は 私の頬の 涙を拭った。
こんな感動は 初めてだった。