心を ほどいて ~コーディネーター麻里絵
キスをしたことは 私にとって 特別なこと。
純也は それを わかっている。
「私の壁 もうボロボロに 崩れちゃった。」
純也の胸で 小さく呟く私。
「ピカソの絵が 壁を砕く 道具になったね。」
純也に 肩を抱かれて 森の中を 歩きながら。
「純也は 秘密兵器 たくさん持っているから。」
「音楽だろう。絵だろう。次は 何を見せようか?」
「もう 何もいらないかも。」
私は 本心から 言ったつもりだったけど。
「まりえの壁は 頑丈だからなぁ。最後の一枚を 砕くのは 大変だよ。」
「そうかな…?」
「うん。絶対 まりえを 傷つけたくないじゃん?」
「純也…」
甘いもどかしさで 純也を見上げる私。
「まりえと こうしているだけで 俺は 嬉しいからさ。」
「うん。私も…」
私は 初めての時よりも 大事にされている。
それは 衝撃的な発見で。
純也を 信じてよかったと
私は 心から 思っていた。