心を ほどいて  ~コーディネーター麻里絵

「麻里絵〜。久しぶり。」

「ホント。5年ぶりだよ。」

「麻里絵 すごく綺麗になった。何か 雰囲気が変わった。」

「そんなことないよ。もう アラサーだよ?」

「それは お互い様じゃない。仕事 順調?」


理沙は 建築科を卒業したのに

全く違う会社に 就職して 秘書をしている。


お互い 仕事のことを話し。

大学の友達の 近況を聞いて。


「私 あのこと 吹っ切れたの 最近。でも8年かかった。ずっと 辛くて。誰とも 連絡取れなかったし。もう ずっと あのままかって 覚悟して。それで フリーになったの。1人でも 生きられるように。」

私は 純也のことを 理沙に 話すつもりだった。


「うん。だから私も 麻里絵に連絡できなかった。」


「でも 私 恋人ができたの。今年の夏。やっと 自分を変えられた。」

「ホントに?麻里絵 良かった。」

「彼にね。4年前から 告白されていたの。でも私 そういう気持ちに なれなくて。ずっと 断っていたの。時々 一緒に ご飯食べたり。それだけのまま。」

「4年も…?」

理沙は 驚いた顔をした。

「うん。でも あの時。夏に 一緒にご飯を食べた時。私 フッと心が動いて 祐一君とのこと 彼に話したの。全部。」

私の話しを 理沙は 頷いて 聞いていた。


「彼 無理しないで ゆっくり 付き合っていこうって 言ってくれて。ホントに 一つずつ。私のペースに 合わせてくれて。」

「すごいね。その人 麻里絵のこと 相当 好きなんだね。」

「えっ⁈」

「だって。麻里絵が 振り向くまで 4年も 待っていたんでしょう?それなのに 付き合っても 麻里絵に 無理させないで。麻里絵のペースに 合わせてくれるなんて。なかなか できないよ。すごく 我慢してたよ。色々な気持ち。」


私は 理沙に言われて 改めて 純也の愛の深さを 思い知った。


臆病で 怖くて。

自分を守ることばかり 必死で。


純也が どんな気持ちで 私を支えていたか。

私は 全く 思いやれなかった。

 


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