心を ほどいて  ~コーディネーター麻里絵

「麻里絵が 祐一君に 話しに行かなかったのって そういう理由も あったんだね?」

理沙は 納得した顔で 頷いた。


「理沙 何度も言ってくれたよね。祐一君と ちゃんと話した方がいいって。でも私 話す気には なれなかった。何を言われても 事実は 変わらないって思って。」

そこまで言って 私は 純也のことを 思った。


「私ね。今の彼に 同じことをされたら 泣き叫んで 問い詰めると思う。そのまま 別れるとしても 彼だけ 無傷で許すなんて 絶対しない。仕事も続けられないくらい 会社にも 暴露して ボロボロにすると思う。」

私の言葉に 理沙は クスクス笑う。


「祐一君には そういう風に 思わなかったことが全てなんだね。私 傷付いて 悲劇の主人公になってたけど。そこまで 祐一君を 思ってたわけじゃなかった。」


「そうかな。麻里絵は ホントに傷付いたし。私達 まだ子供だったから。麻里絵が どうしようもなかったことも 仕方ないんじゃない?」


「私 さっき理沙から 祐一君と千佳が すぐに別れたって聞いて。その後で 祐一君 どうして私に 連絡くれなかったんだろうって 思ったけど。祐一君の 優しさだったんだね。きっと。」


「もし 連絡がきたら 麻里絵 祐一君に 戻ってた?」


「ううん。多分 無理。千佳とのこと こだわって。もし戻っても うまくいかなかったと思う。もっと 傷付いて。もっと ボロボロになっていた。」

私の言葉に 理沙は 神妙に頷く。


「祐一君は そういう私のこと きっと わかっていたから。だから そっとしておいてくれたんだね。私が祐一君を 思っていたよりも 祐一君は もっと 私を 思っていてくれた。今になって やっと気付いた…」



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