アテナ・イェーガー〜出会い、のちにキス〜

「お前、歴史が苦手と言っていたが説明がわかりやすかった。教師になれるぞ」

「そ、そんなことないよ〜」

アテナに褒められ、ロネは嬉しくて頰を緩める。いつもはアテナに教えてもらうことが多いため、たまにはこうして教える側になるのも悪くないなと思ってしまった。

「俺、世界一の魔法使いになるのが夢なんだ。だから学校を卒業したら世界中を旅して、強い魔力を手に入れるようにする。アテナは夢とかあるの？」

しばらくの沈黙の後、ロネはアテナに訊ねた。しかし、アテナは歴史の教科書を黙って見つめるだけだ。

「アテナ？」

少し様子がおかしいとロネはすぐに気付く。アテナは瞬きすらせずに一ページを見つめていた。それは、最近ロネが授業で習った世界を支配しようとしたメルガ・キースのことが書かれたものだった。

「そんな……」

教科書に載っているメルガの顔写真と、目の前にいるアテナの顔はそっくりだった。信じたくなかったことが、真実としてロネに突き付けられていく。