アテナ・イェーガー〜出会い、のちにキス〜

「あった！市場で売っているものよりめちゃくちゃ綺麗だ！！」

ロネは喜びながら薬草を手に取る。新鮮なその香りは市場で売られている薬草では感じられないものだ。ロネは香りを胸いっぱいに吸い込む。

「他にはどんな薬草があるんだろう」

ロネは気になり、探してみることにした。辺りを見回しながら歩くと、次々に薬草が見つかる。

「わっ！こんな貴重な薬草まで生えてるんだ」

家族が調合するぶんも持って帰ろうかなとロネが思っていると、不意に背後から強い魔力を感じた。魔力と言ってもただの魔力ではない。大勢で戦っても傷一つつけられないであろう力の持ち主だ。

「……ここで何をしている？」

冷たい女性の声が響き、ロネの心は一瞬にして恐怖に包まれる。手が小刻みに震えた。

「ご、ごめんなさい！珍しい薬草があるって聞いてーーー」

ロネが振り向いた先に見えたのは、ルビーやガーネットを思わせる赤い瞳だった。その瞳の美しさにロネの胸が音を立てる。