男心と春の空
十八ページの範囲を読み終えかけた時、突然ドアが開いた。

「酒買ってきたよ~。」

カエルのような聞き慣れた樋川の声がして、俺はものすごくホッとする。

待ってたんだぞ、お前のこと。

樋川は入ってくるなり「あぁ、あの話したの。」と軽く言葉を野山に掛け、缶チューハイが三本入ったビニール袋をテーブルの上に置いた。

そしてすぐに明るい声で「はまちゃん、もうそんな読んだのっ?」と話しかけてきた。

俺がちゃっかり課題を進めていたことがバレるだろ。

野山はやっと顔を上げ、缶チューハイをあさった。
ずっと枕に押し付けていた顔は涙で濡れている。

「飲むか。」

そう言って俺は立ち上がりかけたが野山は「いいよ、レポートやれよ。」と言った。

隣で樋川が笑いを堪えているのが分かる。

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